正しい日本語を使おう 文体編
言葉は思いを伝える為に欠かせませんが、今の国語(日本語)には誤りが幾つもあります。しかしながら、「皆が使っているし、変えるのは恥ずかしい」と言い正そうと致しません。この考え方が言葉と我が国を危うくするのであります。誤りは正さなければなりません。加えて、言葉は心の内を露わに致しますので、誠の美しさを得る為にも心を配りましょう。そこで、この度は文体、中でも形容詞の丁寧体(敬体)について説き明かして参ります。
- 作者: 中西進
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/05/28
- メディア: 文庫
- 購入: 8人 クリック: 29回
形容詞の見分け方
度々「荷物が重いです」や「桜は美しいです」等の言い方を聞いた事があるかと思いますが、誤りであります。“重い”や“美しい”は形容詞でありますので、“です”は良くありません。形容詞は必ず“い”で終わります(※形容詞の他にも“い”で終わるものがあります)。そこで「幸い」「遅い」「麗しい」を例えとして話を進めましょう。それぞれの後ろに“だ”を付けてみましょう。そうすると「幸いだ」「遅いだ」「麗しいだ」となります。「遅いだ」「麗しいだ」はおかしいという事が分かりますが、「幸いだ」はおかしくありません。「幸い」は形容詞でなく形容動詞であるからであります。こうして見ると分かりやすいと思います。今使われている言葉では“有難う御座います”があります。これは、形容詞である“有り難い”をウ音便を用いて“有難う(ありがとう)”に変え、“御座います”を合わせた物です。品を良くする接頭語の“お”が付いておりますが、“お早う御座います”も同じであります。品詞毎の普通体(常体)と丁寧体(敬体)の例えを下に記します。
名詞文・形容動詞文
である調(正しい形)
- 現在:幸いである→幸いであります
- 過去:幸いであった→幸いでありました
- 否定:幸いであらぬ(でない)→幸いでありません
- 憶測:幸いであろう→幸いでありましょう
だ調(である調を縮めた形)
- 現在:幸いだ→幸いです
- 過去:幸いだった→幸いでした
- 否定:幸いではない→幸いではありません
- 憶測:幸いだろう→幸いでしょう
で御座(ゴザ)る調(大和言葉ではない形)
- 現在:幸いで御座る→幸いで御座います
- 過去:幸いで御座った→幸いで御座いました
- 否定:幸いで御座らぬ→幸いで御座いません
- 憶測:幸いで御座ろう→幸いで御座いましょう
「日の本であります」「桜であります」「着物であります」など
動詞文
- 意思:見る→見ます
- 過去:見た→見ました
- 否定:見ない→見ません
- 勧誘:見よう→見ましょう
「思います」「食います」「聞きます」など
形容詞文
である調(正しい形)
- 現在:おいしいのである→おいしいのであります
- 過去:おいしかったのである・おいしいのであった→おいしかったのであります・おいしいのでありました
- 否定:おいしくないのである→おいしくないのであります・おいしくありません
- 憶測:おいしいのであろう・おいしかろう→おいしいのでありましょう
だ調(である調を縮めた形)
- 現在:おいしいのだ→おいしいのです
- 過去:おいしかったのだ・おいしいのだった→おいしかったのです・おいしいのでした
- 否定:おいしくないのだ→おいしくないのです
- 憶測:おいしいのだろう→おいしいのでしょう
御座(ゴザ)る調(大和言葉ではない形)
- 現在:おいしゅう御座る→おいしゅう御座います
- 過去:おいしゅう御座った→おいしゅう御座いました
- 否定:おいしゅう御座らぬ→おいしゅう御座いません
- 憶測:おいしゅう御座ろう→おいしゅう御座いましょう
「美しいのであります」「重いのであります」「長いのであります」など
「美しゅう御座います」「重う御座います」「長う御座います」など
まとめ
誤りを正すのは日の本の民である我々の務めであります。親から伝えられ受け継いで来た国の言葉を尊び、心を込めて使いましょう。
- 作者: 長戸宏
- 出版社/メーカー: 明石書店
- 発売日: 2002/09
- メディア: 単行本
- クリック: 8回